AIツールを乗り換えた人は、いくつのツールを使っているのか

Stack Overflowの調査回答を新たに組み合わせ、過去1年にツールを乗り換えたと答えた人と、乗り換えていないと答えた人で、現在使っているツールの数を比較しました。

任意参加のStack Overflow Developer Survey 2026で、同じ回答者の回答を組み合わせた独自分析。調査期間:2026年6月23日~8月5日。

要旨

任意参加のStack Overflowの2026年調査で、過去1年に仕事用のAIツールを乗り換え、現在の週間利用数も回答した7,774人のうち、87.4%が2つ以上を使うと答えました。乗り換えていないと答え、利用数も回答した4,031人では65.4%でした。3つ以上を使う割合は、それぞれ55.4%と26.3%です。Influence IQは、同じ回答者の2つの回答を組み合わせてこの比較を算出しました。[1]

この結果は、現在のツール構成を乗り換え経験とあわせて示すものです。構成がどう変わったかを示すものではありません。仕事用AIツールを売り込む企業や導入を検討する企業にとっては、候補のツールにどの仕事を任せ、その周りでどのツールを使い続けるのかを尋ねる手がかりになります。記事では架空の例で、話を具体化する方法を紹介します。調査が数えるのは、意識して使っているAI対応の製品やインターフェースで、ソフトウェアに組み込まれたAI機能も含みます。契約数、費用、最適なツール数を測ったものではありません。

見込み客が、別のAIツールを試していると言います。デモの日程が決まり、営業チームは自社製品の優位性を見せる準備を進めます。ただ、実務上の大切な点がまだ確認できていないかもしれません。顧客はどの仕事を変えたいのでしょうか。その周りでは、何をこれまでどおり続けるのでしょうか。

投稿の下書き、動画編集、技術コンテンツの準備などを行う人にとって、AIツールは仕事全体の一部分です。文章作成アシスタントを替えても、編集ソフトや社内ツール、別の仕事に使うアシスタントまで替えるとは限りません。乗り換えの話だけでは、ほかのツールを含めた使い方が見えないことがあります。

その背景を、Stack Overflow Developer Survey 2026の2つの質問から調べました。一方は過去1年に乗り換えたか、もう一方は普段の1週間に仕事で意識して使うAIツールやAI対応製品がいくつあるかを尋ねています。回答を組み合わせることで、乗り換えたと答えた人と、乗り換えていないと答えた人のツール構成を比較できます。

ツールの変更を、仕事全体の流れで考える

机の上に、チャット、編集、連携するツールを表す3枚のカードと虫眼鏡を置いた概念イラスト。
複数の仕事用ツールをあわせて検討する様子を表した概念イラスト。

両グループで最も多い回答は「2つ」

乗り換えたと答えた人でも、乗り換えていないと答えた人でも、最も多い回答は2つでした。ただし、最多の回答が同じでも、分布全体が似ているとは限りません。ほかの利用数にどれだけの人が分かれているかを見ると、違いが現れます。

乗り換えたと答え、利用数も回答した7,774人のうち、1つと答えたのは957人、12.3%でした。乗り換えていないと答え、利用数も回答した4,031人では1,357人、33.7%です。1つという回答は、乗り換えていないと答えたグループでかなり多く見られました。各割合の分母は、そのグループで利用数を回答した人です。[1]

3つ以上では関係が逆になります。乗り換えたと答えたグループでは4,303人、55.4%だったのに対し、乗り換えていないと答えたグループでは1,059人、26.3%でした。AIツールを替えたと聞いても、今は1つの製品だけで仕事をしているとは考えないほうがよいでしょう。一方、乗り換えていないと答えた人も複数の製品を使うことがあります。このグループの65.4%は2つ以上と答えています。

表では分布全体を確認できます。違いは、極端に多い数を答えた一部の人だけに限られません。3つ、4つ、5つのいずれも、乗り換えたと答えたグループのほうが高い割合です。0という回答も残しています。過去1年には乗り換えていても、調査時点の普段の1週間には使っていない人がいても不思議ではありません。

これは、1回の調査で捉えた異なる回答者同士の比較です。一方のグループが他方より多くツールを増やした様子を追跡したわけではなく、ほかの条件が似た人を対応させたわけでも、違いの理由を確かめたわけでもありません。例えば、幅広く使う人ほど別のツールを試す機会が多い可能性はありますが、その説明は検証していません。ここで確認したのは、質問ごとの対象期間を踏まえたうえでの、回答分布の違いです。

2つのグループでは、週間AIツール利用数が異なる

過去1年に仕事用ツールを乗り換えたと答えた人:利用数の回答7,774件。乗り換えていないと答えた人:利用数の回答4,031件。各割合の分母は、そのグループで利用数を答えた人数です。

データ表:乗り換えたと答えた人と、乗り換えていないと答えた人の週間AIツール利用数
普段の1週間に仕事で使うAIツール数乗り換えたと回答:人数乗り換えたと回答:割合乗り換えなしと回答:人数乗り換えなしと回答:割合
0個230.3%370.9%
1個95712.3%1,35733.7%
2個2,49132.0%1,57839.1%
3個2,15427.7%70917.6%
4個93212.0%1674.1%
5個6989.0%1393.4%
6~10個4085.2%370.9%
11個以上1111.4%70.2%
出典:任意参加のStack Overflow Developer Survey 2026で回答を組み合わせたInfluence IQの分析。[1][2][3] 乗り換えは過去1年、利用数は普段の1週間についての回答です。乗り換えたと答えた8,637人のうち863人、乗り換えていないと答えた4,423人のうち392人は利用数が無回答でした。欠けた利用数は両グループの割合の分母から除き、0とは扱っていません。前後の変化を比較したものではありません。

本人が意識して使うAI機能を数える

元の質問は、契約しているチャットボットの一覧よりも広い範囲を対象にしています。普段の1週間に仕事で意識して使う、別々のAIツールやAI対応製品を尋ねています。汎用チャットアシスタントだけでなく、AI検索、コーディング支援、社内ツール、業務ソフトに組み込まれたAI機能も数えられます。[2]

チャットアシスタントで文章の下書きを作り、動画編集ソフトのAI字幕機能も意識して使うクリエイターを考えてみてください。この定義では、AI対応製品を2つ使っています。本人が2つ目を主に編集ソフトと捉えていても同じです。一方、本人が意識せず裏側で動いているだけのAI機能は数えません。

1つの製品の中にも区切りがあります。同じ製品内で複数のモデルを選んで使う場合は、通常は1つのツールと数えます。別々のツールやインターフェースから利用する場合は、別々に数えてよいとされています。単位は、裏側にあるモデルの数ではなく、意識して使う製品やインターフェースです。

マーケティング担当者が「AIツールの構成」を尋ねるとき、この区別は重要です。有料アカウントを挙げる人も、アプリを挙げる人も、モデル名を挙げる人もいるでしょう。何を数えるのかを短く説明すると、回答を活用しやすくなります。ツール数が多いから支出も多い、という根拠のない飛躍も防げます。この質問では、価格、契約数、重複した支出、本人が多すぎると感じているかどうかは測っていません。

同じ利用数でも、そこに至る経緯は違う

ここからの2つの話は架空のものです。仕事の変化が同じでなくても、2人が同じ回答をする場合を示しています。どちらも調査回答者の体験談ではなく、調査から復元した結果でもありません。

1人目のコンテンツ制作者は、年初に3つのAI対応製品を使っていました。文章作成アシスタント、インタビュー要約ツール、動画編集ソフトの字幕機能です。文章作成アシスタントを別のものに替え、残りの2つの仕事は同じ製品で続けます。後日、普段の1週間の利用数を聞かれると3つと答え、過去1年に乗り換えたかを聞かれると「はい」と答えます。

2人目は、文章作成アシスタントと動画編集ソフトから始めます。文章作成アシスタントを替えた後、新しいインタビュープロジェクトで別の要約ツールを使い始めます。この人も、3つを使い、過去1年に乗り換えたと答えます。現在の数と乗り換えの回答は1人目と同じですが、2人目は数が増えており、1人目は変わっていません。

調査でわかるのはこの2つの回答で、両者を区別する経緯ではありません。複数の製品をやめて3つに減らした、という別の経緯も考えられます。測定した数だけでは、どの道筋をたどったのか、古い製品を使える状態のまま使わずに残しているのかはわかりません。

AI製品のマーケティング担当者なら、デモを選ぶ前に具体的に聞き直す理由になります。「このツールで、何を今と違う形で行いたいですか」「その変更に、どの仕事用ツールを組み合わせる必要がありますか」と尋ねれば、調査にはない情報が得られます。回答次第で、限られた仕事の置き換えを試す、新しい仕事に使う、今の構成を続ける、といった判断につながるでしょう。これらは顧客が取りうる選択であり、今回の割合から予測した結果ではありません。

制作スタジオは、デモで試す仕事を絞る

今度は、顧客の仕事に使う新しい文章作成アシスタントを評価する、架空の2人組の制作スタジオを考えます。すでに初稿用の汎用チャットアシスタント、承認済みのインタビューメモを扱うAI要約ツール、動画編集ソフトのAI字幕機能を使っています。導入候補に任せたいのは初稿作成です。使っているAI機能をすべて替える計画ではありません。

スタジオはデモで試す仕事を具体的に決めます。承認済みの事実をまとめたブリーフと、ブランドらしい表現の少数の例をもとに、顧客の新商品発表用のSNS投稿を3本下書きします。ブリーフには訴求する内容、読者、投稿で使ってよい事実を記します。今のツールと導入候補には、同じ承認済み資料を渡します。これは理解のための試用計画です。記事では実際に観察した出力や性能スコアを示していません。

比較を始める前に、要約ツールの出力を準備して確認します。こうすれば、元資料が変わった影響と文章作成ツールが変わった影響を混同せずに済みます。動画編集ソフトもそのまま使います。下書きを動画の字幕にする場合は、文章がどう編集ソフトに届くのか、動画を準備する人に必要な情報がそろうかを確認します。

1人は承認済みの事実と表現例に照らして下書きを確認します。もう1人は、選んだ下書きを普段の準備手順に沿って進めます。候補ツールの画面できれいな答えが出たから仕事が終わったと考えるのではなく、実際にどこを直し、何を移す必要があったかを記録します。製品ごとのインポート、エクスポート、連携機能も、受け渡しの一環として試す必要があります。

試用メモは短くまとめられます。「この候補を、投稿の初稿作成用に評価します。入力には承認済みの要約を使います。確認後の文章は、各投稿や動画を準備する担当者に届ける必要があります。今回の案では、今の要約・編集ツールを使い続けます。決定する前に、承認済みの資料でこの仕事を完了できるかを確かめます。」

試してみて、本当に必要なのは別の仕事だとわかれば、案を明示的に変更できます。最初のデモを、より広い仕事にも使える証拠にする必要はありません。今のツールが要件を満たしているなら、使い続ける判断もありえます。周りのツール構成を理解すると、マーケティング担当者は、顧客が本当に変えたい仕事にデモを合わせやすくなります。

提案を広げる前に、変えたい仕事を聞く

この研究を活用するなら、実際の会話に少し質問を足すところから始められます。変えたい仕事、今それを行う製品や手順、結果を次に必要とする人やツールを挙げてもらいます。そのうえで、候補をその仕事に選ぶには何を実演する必要があるかを聞きます。

架空のスタジオにとって、「よりよい文章」だけではデモの内容を決めるには広すぎます。承認済みブリーフから新商品発表用の投稿を3本作る、とすれば仕事が明確になります。文章を受け取る同僚や編集ツールを特定すれば、結果の行き先もわかります。残りのツールをすべて置き換えると約束しなくても、その変更をデモで確かめられます。

これは、測定できる範囲と、複数ツールの利用が見られたことを踏まえた実務上の助言です。導入率の向上、費用削減、継続率の改善を実証した手法ではありません。複数ツールを使うと答えた人の割合から、ベンダーが作るべき連携や、購入する顧客を特定することはできません。

関連する判断には、それぞれ別の問いが必要です。誰が評価し誰が決めるかは、ソフトウェア購入の研究で扱っています。誰がAIシステムを開発・保守するかは、自社開発と外部調達の議論です。どんな効果を確かめたいかは、生成AIの利用者が報告した利点の分析で扱います。これらは今回の問いと分けましょう。今、候補のツールにどんな役割を求めているのでしょうか。

ブリーフから確認まで、1つの仕事を追う

承認済みブリーフと商品画像が文章作成アプリに入り、その下に併用するアプリ、先に公開用の下書きがある概念図。下書きには確認用のレンズと修正のための戻り矢印が付いている。
  1. 承認済みの資料から始める

    今のツールと候補に、同じブリーフと元資料を渡します。

  2. 任せたい役割で候補を試す

    初稿作成を評価し、使い続けるほかのツールも確認します。

  3. 受け渡しを確認する

    次の人やツールまで出力を追い、必要な修正を記録します。

架空のスタジオの試用案。承認済み資料を使い、候補に1つの仕事を任せ、下書きが確認されるまでを追います。

登録は不要です。正確な件数、確認結果、架空のデモ計画メモを含みます。分析を再現する技術的な手順は英語です。元の調査の出典とライセンスは、参考情報およびパッケージに記載しています。[5]

回答をどのように組み合わせたか

Influence IQは、Stack Overflow Developer Survey 2026の公開回答データを分析しました。公開された回答は30,903件で、調査期間は2026年6月23日から8月5日です。Stack Overflowのサイトと、受信を希望した人のメールリストを通じて募集した任意参加の回答者サンプルです。回答はそのまま報告し、すべての開発者、企業、クリエイターの母集団推計とは扱いません。[4]

同じ回答者の、任意回答の週間利用数と過去1年の乗り換えに関する回答を組み合わせました。「はい」に付随する理由の選択肢はすべて乗り換えたグループに含め、「いいえ」という回答を選んだ人を乗り換えていないグループに含めました。「該当しない」と答えた人と、乗り換えの質問を無回答にした人は、どちらの比較グループにも入りません。2つの質問は、調査の同じAI利用に関する回答経路にあります。[2][3]

乗り換えたと答えた8,637人のうち、利用数を答えたのは7,774人、無回答は863人でした。乗り換えていないと答えた4,423人では、利用数の回答が4,031人、無回答が392人でした。利用数が欠ける割合は、それぞれ10.0%と8.9%です。表示する各割合は、その区分の人数を、同じグループで利用数を回答した人数で割っています。無回答を0とは扱いません。

利用数が記入された回答は、すべて0以上の整数として読み取れました。主な表では0も大きな数も残し、10を超える値は11以上にまとめています。利用数を答えた全11,919人のうち、100を超えたのは24人で、そのうち22人は乗り換えたグループでした。100超を除いても、2つ以上の割合は87.4%と65.4%です。0より大きい数に限ると87.7%と66.0%になります。こうした確認をしても、自己申告が実際に観察したソフトウェア利用になるわけではありません。[1]

Stack Overflowは、ツール数と乗り換え理由のグラフをすでに別々に公開しています。今回加えたのは、回答を組み合わせた分布です。全件数、定義、確認結果をダウンロードできます。これは記述的な分析であり、ツール変更の相談を具体的に始める材料です。本人の仕事、これまでの経緯、評価後の判断は、実際の会話で確認する必要があります。[2][3]

出典・注記

  1. Influence IQによるStack Overflow Developer Survey 2026公開データの分析。参照版はコミット6c646551e86ffcafca0ac04f1dfb17a2558ec23dに固定しています。主な比較は、乗り換えに「はい」と答え利用数も記入した7,774人と、「いいえ」と答え利用数も記入した4,031人です。件数・割合は加重せず、割合は小数第1位に丸めました。パッケージには全区分の分布、欠損状況、元の定義、感度分析を含みます。
  2. Stack Exchange Inc.(2026)、AIツールの数、Stack Overflow Developer Survey。任意回答のこの質問は、普段の1週間に仕事で意識して使う、別々のAIツールやAI対応製品を数えます。公式ページでは全体の分布が公開されており、今回の比較は乗り換えの回答を加えています。
  3. Stack Exchange Inc.(2026)、過去1年にAIツールを乗り換えましたか、Stack Overflow Developer Survey。任意回答・単一選択の質問で、仕事用ツールを乗り換えたか、乗り換えた場合は主な理由を1つ尋ねています。以前の利用数、置き換えの経緯、検討したすべての理由はわかりません。
  4. Stack Overflow Developer Survey 2026の調査方法。2026年6月23日~8月5日に収集した30,903件の回答が公開されています。Stack Overflowの媒体と受信を希望した人のメールリストでの告知は、すべての企業、クリエイター、開発者を代表するサンプルを作るものではありません。
  5. Stack Exchange Inc.のStack Overflow Developer Surveyの情報を含みます。データベースはOpen Database License(ODbL)1.0、個々の内容はDatabase Contents License(DbCL)1.0で提供されています。出典表記、ライセンスへのリンク、再現手順は分析パッケージに含まれます。

全10言語版で、任意参加のStack Overflow調査の同じ回答を扱っています。翻訳によって各国の推計になるわけではありません。

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