AIが高すぎると感じる企業は、ほかに何を懸念しているのか
AIの費用が高いと答えた企業は、人材やデータについても懸念を抱いているのでしょうか。ブラジルの企業調査を分析し、AIの提案を具体的に検討する手がかりを探りました。
TIC Empresas 2025を用いたInfluence IQ独自の分析。ブラジルで2025年2月から2026年1月に実施された聞き取り調査に基づきます。
要旨
今回定義したブラジルの調査対象群のうち、AIの費用が高すぎると答えた企業の推定37.5%が、必要なスキルを持つ人材の不足と、データの入手可能性または品質の問題を両方とも挙げていました。調査の重みを反映した推定値の95%信頼区間は29.8%~45.2%です。これらはITの担当組織・部門または専門人材があり、列挙された七つのAI技術のどれについても利用しているとの回答がなく、費用が高すぎると感じている企業です。[1][2][8]
分析に用いたTIC Empresas 2025は、対象業種に属する正式に登録された民間企業のうち、働く人が十人以上の企業を対象に、2025年2月から2026年1月に実施されました。主な分析対象群は、公開データの547件です。実務上の示唆は、価格に加えて、何の業務を行うのか、誰が成果物を確認するのか、どの情報が必要なのかを尋ねることです。これは回答された懸念から導いた計画上の助言であり、値下げや研修が導入を促すという効果を示したものではありません。
AIの導入案を検討していた経営者が、価格を見て手を止める。次の打ち合わせは、もっと安いツール探しになるかもしれません。その前に、もう一つ確かめたいことがあります。そのツールを使うために、チームは何をする必要があるのでしょうか。
これは説明のために描いた場面で、調査の聞き取り内容ではありません。AI導入の課題をただ一覧にするのではなく、その先を調べた理由を表しています。費用を懸念した企業が、人材やデータについても懸念を挙げているのかを知りたかったのです。
新しい業務を検討するマーケティングチームにとって、この区別は大切です。価格は表に並べて比較できます。一方で、誰が仕事の結果を確認するか、その人が何の情報を頼りにするかは、別に話し合う必要があります。今回の分析は、それらの懸念が同じ企業で挙がる割合を示します。後半の具体例では、この区別を使える判断資料にまとめる方法を紹介します。
提案と、その実施に必要な準備

人材とデータの両方への懸念はどの程度重なるか
費用を懸念する企業が、人材とデータの両方への懸念を挙げた割合
ITの担当組織・部門または専門人材があり、七つのAI技術のいずれにも利用しているとの回答がなく、費用が高いと感じている企業。人材とデータの両方への懸念を明確に挙げた割合を測定しました。
| 調査対象群 | 調査の重みあり | 調査の重みなし | 95%区間:下限 | 95%区間:上限 | 対象標本群の企業数 |
|---|---|---|---|---|---|
| AIの費用が高いと答え、分析条件を満たす企業 | 37.5% | 36.0% | 29.8% | 45.2% | 547 |
95%信頼区間は29.8%~45.2%です。この幅を踏まえると、結果は「およそ十社に四社」と捉えるのが適切です。37.5%という値が、似た条件のすべての企業を正確に測った数字であるかのようには扱えません。
三つの回答が同じ企業の記録に含まれるため、重なりを直接測れます。費用を懸念した企業が、人材とデータの両方についても明確に懸念を挙げたかを確認できるのです。
一方、それ以外の回答には複数の可能性が残ります。両方を明確に挙げた群に入らない企業は、片方だけを挙げたかもしれませんし、どちらも挙げていない、あるいは回答が不明かもしれません。残りを「問題は価格だけ」という群と呼ぶことはできません。質問票にはほかの理由もあり、今回の主な結果はそれらに順位を付けるものでもありません。
この割合が示すのは、過去に調査された、このブラジルの対象群です。ほかの地域の企業は、ここでの区別を、自社で調べる問いを立てるために使えます。
ここでいう「費用」「スキル」「データ」とは
費用の質問は、費用が高すぎると感じるかを尋ねています。提供会社の見積額、企業が支払える額、回答者が想定した費用項目は記録していません。そのため、ここでは「費用が高いという認識」による懸念と表現します。どの程度の値下げが必要か、割引によって判断が変わるかは、この回答からは分かりません。[2]
人材の質問が扱うのは、その技術を使うスキルを持つ社内の人材です。質問票では先に、ITの担当組織・部門または専門人材があるかを確認しています。ただし、その体制があることだけでは、実際に関わる人が、提案されたAI業務に必要なスキルを持つとは判断できません。
データの質問は、入手可能性と品質を一つにまとめています。「はい」は、適切な情報がそもそもあるか、あっても使える状態か、あるいはその両方への懸念を表す可能性があります。調査ではこれらを分けていないため、特定の企業にどのような準備が必要かまでは分かりません。
AIの利用に関する七つの質問は、生成AIだけを対象にしているわけではありません。テキスト分析、音声認識、機械学習、業務フローの自動化なども含まれます。結果は、このより広い技術の一覧についてのものです。
人材やデータの回答が不明でも、費用を懸念する対象群からは外していません。主な割合で数えるのは、両方を明確に挙げた回答です。答えのない質問を推測で埋めることはしていません。また、AI利用への回答が不明または未回答でも対象に入り得ます。「利用しているとの回答がない」は、「利用していないと確認できた」という意味ではありません。
価格への懸念を、具体的な計画の問いに変える
経営者やマーケティング責任者が実務に生かすには、三つの問いを分けて考えるとよいでしょう。提案された業務にいくらかかるのか、誰が仕事の結果を判断できるのか、どの情報が必要なのかです。観測された懸念の重なりは、これらを一緒に尋ねる理由になります。自社のAI導入の課題を調べるときは、業務を具体的に定め、実際に担当する人から得られる根拠を出発点にしてください。
まず、誰かが確認できる仕事の内容を書きます。「マーケティングにAIを使う」では広すぎて、チームに何が必要か見えてきません。「届いた商品への質問をテーマ別にまとめ、営業チームが確認できるようにする」なら、成果物とその利用者が明確です。業務を絞ることで、具体的な仕事に対する価格を話し合えます。
次に、その価格に何が含まれるかを尋ねます。ツールの利用料と、情報の準備や成果物の確認にかかる社員の時間は、計画では別の項目です。これは計画のために提案する分け方であり、調査で測った費用の内訳ではありません。慣れない仕事だから高くなる、あるいは時間を節約できると決めつけずに、各項目を書き出せます。
AIへの自信を漠然と尋ねるよりも、確認の方法を尋ねるほうが役立つ場合があります。誤って分類された問い合わせに誰が気づくでしょうか。判断が難しいときに、どの資料を確かめるでしょうか。成果物が使えるかを誰が決めるでしょうか。これらは提案した業務の責任を明らかにする問いです。調査の数値から個人のスキルを判定するものではありません。
次の行動は、今決めるべきことに見合う範囲にします。見積もりの内容を確かめる、正式な商品資料を探す、同僚に小さな例を確認してもらう、といった対応でよいかもしれません。大きなプロジェクトを決める前に、残っている具体的な疑問に答えられる確認を選びましょう。
架空の卸売会社が、一つの業務を検討する
地域の架空の卸売会社を考えてみましょう。営業チームには、ウェブサイト、メール、SNSのメッセージを通じて商品への問い合わせが届きます。あるマネジャーが、AIで問い合わせをテーマ別にまとめる案を出しました。チームは、商品情報をもっと分かりやすくする必要がある質問と、営業担当者へ回すべき質問を見分けたいと考えています。これは計画を説明するための例で、調査で観測された企業ではありません。
最初の話し合いは、価格のところで止まります。マネジャーは、すべてを費用の問題と決める代わりに、欲しい成果物を書き出します。それは、人が確認できるよう元のメッセージへの参照を付けた、問い合わせテーマの一覧です。自動返信や、顧客への商品の推薦は、この案には含めません。
営業責任者は、似た商品名が取り違えられる可能性に気づきます。そこで、最新のカタログを使って分類を確認し、意味が曖昧な問い合わせに印を付けることにします。ここで必要なのは、社内に漠然と「AIが得意な人」がいるかを問うことではありません。その責任者に、確認に必要な情報と商品知識があるかを確かめることです。
同僚が、この業務で使う情報を確認します。商品説明は複数の文書に分かれており、問い合わせの中には顧客情報を含むものもあります。チームは例を作る前に、どれが最新の商品情報なのか、どのメッセージを適切に使えるのかを確認することにしました。
マネジャーは、より具体的な提案を求められるようになります。ツールは何を行うのか、人は何を確認するのか、どの情報を準備するのか。チームは、これらの作業を見積額と並べて記録します。
次に決めるのは、限られた範囲の確認で残る疑問に答えられるかです。その結果によって、進める、業務を見直す、保留する、という選択肢があります。マネジャーは判断の理由と、どのような新しい情報が得られれば再検討するかを記録します。
次のAI提案を検討する前に使える記入用シート
このテンプレートを、既存の企画書や会議メモにコピーして使ってください。Influenceのアカウントは必要ありません。一つの業務案について記入します。
1. 想定する業務:[具体的な作業] → [誰かが確認できる成果物] → [利用する人またはチーム]。提案に含めることだけでなく、含めないことも書きます。
2. 費用に関する問い:[検討中の見積もりまたは概算] · [含まれる内容] · [まだ分からないこと]。関係がある場合は、社員による準備や確認の作業を別に記録します。提案を正当化するために、根拠のない削減額を作らないようにします。
3. 確認の責任:[確認する人の名前] · [確認する内容] · [参照できる資料] · [判断に迷ったときの対応]。役職名だけでは、これらの問いに答えられない場合があります。
4. 必要な情報:[元の文書または記録] · [管理している人] · [最新で、適切に使えるか] · [入手可能性または品質について残る疑問]。
5. 次の小さな確認:[解決したい問い] · [担当者] · [判断材料となる根拠]。結果を解釈する前に、何を確認するのかを書きます。
6. 判断の記録:[進める、見直す、保留する] · [確認によって裏付けられた理由] · [残る不確実性]。懸念そのものと、その懸念が解消されたという根拠を分けて扱います。
架空の卸売会社の例では、成果物は問い合わせテーマの一覧、確認者は営業責任者、商品情報の参照先は最新のカタログです。次に確かめるのは、その進め方で営業チームが評価できるものを作れるかです。このように記入すれば、無関係な調査の成功率を持ち込まずに、提案を具体化できます。
調査をどのように分析したか
NIC.br/Cetic.brが公開した、機密保護のための処理後のTIC Empresas 2025ミクロデータを使いました。聞き取りはブラジルで2025年2月から2026年1月に行われました。調査対象は、定められた業種で事業を営む、正式に登録された民間企業のうち、働く人が十人以上の企業です。[1][3][4]
分析は、質問票にあるITの担当組織・部門または専門人材の有無の確認から始めます。続いて、七つのAI技術の利用について一つも「はい」と答えておらず、費用が高すぎると感じるという質問には「はい」と答えた企業を対象にします。主な割合は、人材とデータの両方への懸念を明確に挙げた企業の調査重みの合計を、条件を満たす費用懸念群全体の重みの合計で割ったものです。人材やデータに関する不明回答も、この分母に残ります。
標本抽出による不確実性は、提供された200組の結合ブートストラップ反復重みを使って計算しました。区間が表すのは個々の推定値の不確実性であり、起こり得るすべての誤差ではありません。事前に定めたデータの十分性と公表に関する基準を満たす結果だけを表示しています。表示していない内訳をゼロと解釈することはできません。[8]
研究の問いと計算方法は、回答の組み合わせによる結果を見る前に定めました。資料の検証中に、分析対象群の外にある公開回答コードの不整合を記録し、公表済みの参照表との比較に求めていた精度が細かすぎる点を修正しました。何をいつ変更したかは、ダウンロード資料に記載しています。分析対象集団と目的の計算方法は変更していません。独立した計算でも、ここで公表する結果を再現しました。[8]
公開ファイルには、機密保護のための処理が施されています。Cetic.brは公表表に照らしてデータの有用性を確認していますが、新たな組み合わせの分析がすべて、元の聞き取りデータを使った分析と同一になると保証するものではありません。[7]
人材、データ、資金に関する懸念が同時に存在し得ること自体は、すでに知られています。先行研究は障壁の組み合わせによって企業を分類しており、調査実施機関の2025年報告書も、人材やデータを導入の要件として論じています。今回の貢献は、この特定の費用懸念群で、選んだ懸念が同時に挙げられる割合を直接推定したことです。AIを導入しない新たな原因を発見したというものではありません。[5][6]
登録は不要です。表には過去の調査の集計結果を掲載しています。英語の技術パッケージは、手法、資料の検証、公表する結果の保護ルールを説明しています。調査の個別記録は再配布していません。
出典と注記
- NIC.br/Cetic.br、TIC Empresas 2025の公開基礎ミクロデータ、機密保護処理後のバージョン1.0。2026年6月15日公開。元データはCC BY 4.0に従って出典を表示して使用しています。本文の割合は公開データからInfluence IQが計算したもので、公表済みの主要結果を引用したものではありません。
- TIC Empresas 2025質問票、H9およびH13。H9は、ITの担当組織・部門または専門人材の有無を確認した後に、七つのAI技術を尋ねます。その利用回答に一つも「はい」がなければH13に進みます。利用への不明回答や未回答も含みます。H13_Aは費用が高すぎるという認識、H13_Bは人材のスキルを扱い、H13_Dはデータの入手可能性と品質を合わせて尋ねています。
- TIC Empresas 2025方法論報告書。標本抽出枠は、指定されたCempre/CNAE業種で事業を営む、正式に登録された民間企業のうち、働く人が十人以上の企業を対象とします。ブラジルのすべての組織、零細企業、個人クリエイター、個々の働き手の標本ではありません。モジュールHは三回の調査すべてで収集されました。
- TIC Empresas 2025データ収集報告書。実地調査は2025年2月から2026年1月に行われました。報告書の完了インタビュー数は4,174件ですが、公開データは4,171件です。確認した資料には、この差の説明はありません。インタビュー数に合わせて記録を追加せず、固定した公開データ版を使用しました。
- Emerson Gomes dos SantosおよびMárcia Siqueira Rapini、Barreiras na Adoção Combinada de Tecnologias Digitais por Empresas Brasileiras: uma proposta de tipologia(2024)。この先行分析は、TIC Empresas 2021とクラスタリングを用いて障壁の組み合わせを調べています。関連する先行研究ですが、今回の条件で絞った2025年の群と直接比較できる推定値ではありません。
- TIC Empresas 2025の調査実施機関による報告書。特に、Natália Marroni BorgesがAI導入と組織への定着を論じた94~95ページを参照しています。そこでは、データ、人材、能力、ガバナンスが実施にあたっての検討事項として挙げられています。今回の分析は、これらの一般的な考え方が新しいと主張するものではありません。
- Cetic.brのミクロデータ利用案内は、機密保護のための再符号化や秘匿処理と、公表集計計画に照らした有用性の評価を説明しています。特定の公開記録がどの処理を受けたかを示すものではなく、新たに調べるすべての組み合わせの関係が、元の聞き取り時から変わっていないと保証するものでもありません。NIC.br/Cetic.brは今回の分析や解釈を承認・推奨していません。
- Influence IQの分析方法と再現用コードのパッケージ。公開データの十一件では、七つのAI利用項目がすべて「該当なし」とされる一方、九つの理由欄には別の回答コードが入っていました。これらは、もともと定義した分析対象集団の外にあります。全記録を保持しました。また、公開表を確認した後、目的の結果を見る前に、照合時の精度の扱いを修正しました。パッケージには、この二つの変更、不確実性の計算、公表する結果の保護ルールを記載しています。個別の記録は含みません。
記事と表の項目名は十言語で提供しています。元の質問票はポルトガル語、技術的な再現用パッケージは英語です。対象がブラジルの企業であることと、2025年2月から2026年1月という調査期間は、すべての言語版で変わりません。
